事務所や店舗の物件を借りるにあたり、原状回復にまつわる知識は必ず身につけておきたいものです。
アパート・マンションより高額かつ複雑になりやすく、オフィス・店舗の移転や退去時に大きな問題となる事例が多いです。
よくあるトラブルとその対策を、名古屋の事業用賃貸専門不動産会社「OFFICEONE(オフィスワン)」が分かりやすく解説します。
1. 原状回復費の目安(1坪あたり)
内装状態 | 内容 | 目安金額(税抜) |
---|---|---|
事務所仕様から原状回復 |
OAフロア、天井・照明、壁紙などの撤去・補修 |
約 1.5万〜3万円/坪 |
スケルトン戻し |
全面撤去(内装材・空調・電気・配管等) |
約 3万〜6万円/坪(物件によっては10万円超も) |
2. 原状回復費に影響する主な要素
1.契約内容
○ 原状回復の範囲が「入居時の状態」か「スケルトン」かで大きく変わります。
○ スケルトン渡し・スケルトン戻しの場合は高額になる傾向があります。
2.内装の規模・種類
○ パーティション、床材(カーペットタイル、OAフロア)、天井材などの施工が多いほど撤去費が増加します。
○ 造作壁や専用空調・電気設備がある場合、追加費用が発生。
3.工事業者のビル側指定
○ 原状回復を行う工事業者をテナント側で自由に選べず、ビル側の指定業者を使わなければならないケースがあります。
これにより相場より高額になることも。
4.面積
○ 小規模(20坪以下)の場合は単価が割高になることがあります。
3. 金額の参考事例
30坪の一般的な事務所内装撤去
→ 約 60万〜90万円
50坪のスケルトン戻し(空調撤去など含む)
→ 約 200万〜300万円
4. アドバイス
5. よくある原状回復トラブルとその内容
トラブル内容 | 詳細 |
---|---|
✅ 原状回復範囲の認識違い | 「入居時の状態」に戻せばよいと思っていたが契約上は「スケルトン戻し」となっていた、など。 |
✅ 高額な工事費の請求 |
ビルオーナー側指定の工事業者が相場よりもかなり高額な見積を提示。 |
✅ 内装撤去後の追加請求 |
原状回復後に「施工が不十分」「修復箇所が残っている」などと言われ、再工事や追加費用を請求される。 |
✅ 造作物の買取拒否 |
賃借人が残した設備や造作(什器・照明・空調等)について「そのまま使えると思った」と主張するが、オーナーが買取を拒否して撤去を強要。 |
✅ 契約書に明記がない曖昧な原状回復条件 |
「現状復旧」としか書かれておらず、解釈をめぐって争いになる。 |
6. トラブルを防ぐための対策
対策 | 詳細 |
---|---|
✅ 契約時に「原状回復範囲・条件」を明記 |
「スケルトン返し」か「入居時の状態」かを明文化。写真付きの内装引き渡し状況を添付するのも有効です。 |
✅ 原状回復の工事業者を選べるよう交渉 |
オーナー指定ではなく、複数見積もりを取れるように契約時に交渉。 |
✅ 内装工事は事前承諾を得て記録する |
入居後の改装・造作については、書面で事前承諾を取り、内容を記録しておく。トラブル防止に有効。 |
✅ 退去時は立ち会いを行い、記録を残す |
原状回復の工事前・完了後に立ち会いを行い、オーナーや管理会社との認識を一致させる。録音・写真の記録も推奨。 |
✅ 専門家のサポートを受ける | トラブルが発生しそうな場合は、不動産の専門家(弁護士・宅建士・退去コンサル等)に相談。契約書チェックの段階からサポートを受けるのが望ましい。 |